こんにちは、ttyです。
栃木県庁と長野県庁で計13年間を県職員(林業(林学)の技術職員)として働いていました元公務員です。
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ふるさと納税について、総務省は2019年6月に制度を改正し、返礼品の地場産の割合などの基準をみなおしました。
「ふるさと納税」とは、自分が選んだ自治体へ納税することができる制度で、納税された自治体から「返礼品」を受け取ることができます。
所得税控除により、実質負担額が2千円程度で、豪華な返礼品を受け取ることもできるため、返礼品などをお得にゲットする方法などが話題になりました。
手続きもかんたんで、「さとふる」などのWEBサービスを使えば、自分で確定申告しなくても、処理をしてもらえます。
返戻品も多様化し、豪華なものも登場し、自治体間の競争が過熱しました。
総務省は、返礼品の基準を見直し、返礼品は寄付額の3割以下かつ地場産の物とするよう義務付けるなど、ふるさと納税で地元にお金が落ちる制度に改正しました。
法の改正前にも、返礼品の基準については、自治体への通知、
すなわち「行政指導」という形で、過熱する返礼品競争を抑えようとしていましたが、泉佐野市をはじめ、自治体の一部はこれを実質的に無視する形で、納税額をどんどん伸ばしていました。
行政指導は、法的には、「任意の協力を促す」ためのものであるため、強制力はありません。
ただし、泉佐野市などは新制度移行後は、その制度に従う方針を示していました。
これに対し、総務省は、国の「指導」に従ってこなかった泉佐野市をはじめ、いくつかの自治体について新制度の適用を除外しました。
これに対し、泉佐野市が総務省を提訴。
というのがこれまでのざっくりした流れです。
これらの意味するものを考えてみました。
国が本当に恐れたのは「地方自治体の台頭」
国と地方自治体は「対等な関係」です。
都道府県と市町村などの自治体同士でももちろん同様です。
たまに、市町村〈 都道府県〈 国 という序列があるように解釈する方がいますが、これは厳密には誤りです。
しかし、東京都や長野県軽井沢町など、地方税の税収が潤沢である一部の自治体を除き、地方自治体の歳入(収入)の3割は国から交付される「地方交付税交付金」などのお金です。
その他、使途の限定される補助金(国庫支出金)も多額にわたります。
「地方交付税交付金」は、表むきは、地方格差の是正などのため、国税として徴収したものを再分配する仕組みですが、国からの財源に依存している以上、本当の意味では対等ではありません。
実質的には地方自治体を統率するためのツールとなっています。
また、地方交付税交付金を所管している総務省の官僚は、交付金などのやりとりを通じ、地方自治体との人脈のパイプを作ることができます。
地方自治体の副市長、副知事、総務部長などの幹部職員が、総務省からの出向者である場合が多いのも、このような背景があります。
その後、副知事などの幹部を務めた、総務省の官僚がその地方自治体の知事などの首長に出馬する。
というパターンもよく見受けられます「王道」です。
ぶっちゃけた話、地方交付税交付金などは総務省の管理用の「既得権益」であると言えます。
(参考記事)
泉佐野市などは、地方交付税に金額の何十年分も、ふるさと納税を獲得しています。
また、それ以外の自治体でも問題視されているのは、高額のふるさと納税を獲得した自治体です。
総務省は「制度の主旨」や「指導に従わない」ということを強調しますが、
総務省が本当に恐れているのは、交付税による地方自治体のコントロールができなくなること、既得権益を失うことだと私は考えています。
ここが変だよ総務省の不自然な法解釈
国に逆らった報復ありき?
国が「指導」を行ってきたとはいえ、あくまで「行政指導」の範囲であると考えられます。
泉佐野市は旧制度の適用においては違法なことをしていません。
行政指導とは、前述のとおり、ある行政目的のために「任意の協力を求める」行為なので法的な拘束力がありません。
(参考記事)
総務省の官僚が法令と行政指導の境目を知らないわけはありません。
交付税などを盾にし、従順のはずの自治体が、実質的に国の指導を無視することは想定外だったに違いありません。
しかし、制度の改正が6月であったにもかかわらず、過去に遡って、処分したような形をとったのは、「報復ありき」であったと言われても仕方がないでしょう。
過去に遡った法の適用はありえない
日本は法治国家なので、その背景が何であれ、国民の代表である国会で制定された法律は、守ることになります。
「悪法もまた法」という格言もあるくらいです。
しかし、総務省の泉佐野市への措置は、過去に遡って、新制度の法を適用している形になります。
いってしまえば、
「あとから決まった法律で、あのときは違法でしたので処分します。」ということなのです。
通常の法改正などによる制度変更の場合はむしろ逆です。
制度が変わる前からの活動に対し、不利益が無いように、措置されることが一般的です。
例えば、昭和49年に森林法が改正され、1haを超える森林の開発については、都道府県知事の許可が必要になりました。
背景には、バブル期でゴルフ場やリゾート施設関連の森林の乱開発がありました。
しかし、この制度以前から行われていた現在進行形の開発は、「許可をうけたものとみなす」という措置がとられています。
※ 変更などがあった場合は、新制度の適用となります。
俗に「みなし許可」と呼ばれるもので、その開発行為を始めた時点では法律がなかったんですが、現在進行中に法律ができてしまった。
違法だから法律の許可をとってください。というのではなく、開発を始めた時点では違法ではなかったんだから・・・という整合性をとっているわけです。
制度が大きくかわるときにはこのように「経過措置」というものがとられることが一般的です。
法律を熟知している官僚がやることとは思えません。
それれだけ、地方の台頭が許せなかったのか、あるいは政治的な圧力があったのでしょうか・・・・
まとめ
たしかにふるさと納税の過熱はあったと思います。
特定の自治体が税収を独り占めのような状態を是正してほしいという、多額の税収をゲットできない自治体からの声も以前からあったようです。
しかし、今後財源がどんどん縮小する危機感をもっている自治体は、知恵を絞って、税収を上げようとしました。
これは重要なことだと思います。
しかし、国の法は依然として、地方自治体をコントロールするという意識が強いため、自分たちで作ったルールの欠陥にもかかわらず、無理やり報復している・・・・。
ふるさと納税の混乱により、あぶりだされた「国と地方自治体のパワーバランス」と国の本音。
今後は、そういった点でも目が離せません。
今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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